佐々木モトアキ

2018年7月27日、蒲郡でライブがあった。
仕事を休めず、終わったらすぐに駆けつけてみよう。 そう決めていた。
間に合うかもしれないし間に合わないかもしれないし。
途中に必ず起こるであろう帰宅ラッシュの渋滞をいかに早く抜けるか。 朝からそればかり考えていた。

結果的に間に合ったその時間は、すでに暗くなっていたが遠い以前にお祭りで来たことがあるなぁと、コインPに停め店まで歩きながら考えていた。

お世辞にも栄えているとは言い難いその駅前を一歩背を向けたら目に入ってきた看板。
それは『うさぎ』
今から聴くであろう曲『さよならうさぎ』が浮かび、なんとなく嬉しい。

その日はある男性の命日だ。
存じ上げないその男性は、モヒカンで強面にも関わらず人懐っこく周りに愛されていたのだろうことが。とてもよく分かる。

所縁のある人々が集まり時間を音楽という流れに乗せて共有する。
私はその場に少しだけお邪魔した。

地元の唄うたいの人が歌い始めて引き寄せられる。
歌も声も、もう一度聴きたいなぁと思わせる。
きんばらしげゆき氏。


小さな箱の右側に、無骨な階段。
その上から、佐々木モトアキはそっと覗くように
座って眺めていた。
それはとても絵になる少し物悲しい視線だった。
二人の共通の友人は、きっとその階段で座って
彼等が歌うそれを見ていたのだろう。

やがてお目当ての佐々木モトアキ氏が歌う。
選曲は、この特別な夜に捧げるような…

ツアーの最中ではあるけれど、この日はこの場所でこの空気を共有した者達だけが感じる言葉と音。
それは確かに名古屋で聴いたあの夜のライブとは違う、一周忌の友への氏からのギフトであった。
そして、この場所にいられたことで、確かに『感謝と覚悟とケ・セラ・セラ』の意味をも考え直したいと強く思った。
命の、時間の、儚さと大切さ。

ありがとうございます。